転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


252 これってそんなに魔力を使わないんだよ



「あら、二人しておいしそうなものを食べてるのね」

 僕とスティナちゃんがせっせとセリアナのシャーベットを作って食べてると、水を汲みに行ってたヒルダ姉ちゃんが帰ってきたんだ。

「お帰り、ヒルダ姉ちゃん。お水汲んで来てくれた?」

「ええ。その為に出かけたんだから、当たり前でしょ」

 ヒルダ姉ちゃんはそう言うと、僕にお水がいっぱい入った陶器のビンを渡してくれたんだ。

「ところで話は戻るけど、二人して何を食べてるの?」

「あのね、じゅーちゅをじゃーってして、しゃしゃってしたの」

 でね、僕たちが何を食べてるのかを聞いてきたんだけど、それに答える前にスティナちゃんが得意そうにそう言ったんだよね。

 でもそれを聞いたヒルダ姉ちゃんはよく解んなかったみたいで、頭をこてんってしながら僕の方を見たんだ。

「あのねぇ、僕たちが食べてたのはシャーベットって言う冷たいお菓子なんだけど……う〜ん、お話しするより、作った方が早いから見てて」

「ルディーンにいちゃ。スティナ! スティナがおかあさんにつくったげたい!」

 だから僕、シャーベットがどんなお菓子なのか教えてあげようとしたんだよ? でも、どういったらいいのか解んなかったから作ってあげようって思たんだ。

 でも僕たちのお話を聞いてたスティナちゃんが、ヒルダ姉ちゃんの分は自分が作るって言いだしたんだよね。

「スティナが? ルディーン、大丈夫なの?」

「うん。さっきも二人で一緒に作ってたもん。ちゃんと気を付けてれば、スティナちゃんも一緒に作れたんだよ」

「スティナ、じょうずにつくれうよ!」

 シャーベットを削る木のへらを振り上げながら、目をキラキラさせるスティナちゃん。

 それを見たヒルダ姉ちゃんはとっても優しい顔で笑うと、

「そっか。じゃあ、スティナに作ってもらおうかな」

「うん! スティナがつくってあげうね」

 スティナちゃんにシャーベットを作ってってお願いしたんだ。


「へぇ、本当にスティナでも作れるのね」

 僕がセリアナのジュースを銅板に流すと、それをスティナちゃんが木のへらでそれを削ってふちに寄せていく。

 その作業をヒルダ姉ちゃんは感心したような顔で見てたんだ。

「うん。この銅板のとこはとっても冷たいから、ジュースを入れたらあっという間に凍っちゃうんだ。だからちょっとずつ入れたらとっても薄い氷ができるもん。それならスティナちゃんだって木のへらで削れるでしょ?」

 そりゃあ一度にいっぱい入れたり、凍ったまんまちょっと置いたら硬くてスティナちゃんじゃ削れないかもしれないよ。

 でも入れてすぐならまだ完全に固まりきってないから、スティナちゃんだって簡単に木のへらで削る事ができるんだ。

「なるほどね。でもこの板、魔道リキッドを入れる場所がないわね? って事は、ルディーンかキャリーナがいないと使えないって事?」

「だってこれ、さっき思いついて作っただけだもん。そんなの付けてたら、ヒルダ姉ちゃんが帰ってきちゃうじゃないか。そしたら僕、イーノックカウに行かないとダメだから、スティナちゃんにシャーベット作ってあげられないでしょ?」

 とっても簡単に作ったからすぐできただけで、ちゃんとした魔道具として作ろうって思ったら、こんなに早くできるはずないんだよね。

 だからそう教えてあげたんだけど、そしたらヒルダ姉ちゃんがとってもがっかりしちゃったんだ。

「どうしたの?」

「スティナがあんなに楽しそうに作ってるでしょ? だけどルディーンたちが帰ってくるまで作れないとなると、ちょっと可哀そうかな? って思ったのよ」

 そっか。確かにスティナちゃんは自分でお菓子が作れるのがうれしいのか、さっきからずっとシャーベットを作ってるんだよね。

 でも僕がイーノックカウに行っちゃうと、帰ってくるまでは魔道具があっても作る事ができないってヒルダ姉ちゃんは思ったのか。

「大丈夫だよ。僕がいなくっても、シャーベットは作れるもん」

「えっ? でも、ルディーンもキャリーナもいないとなると、魔力が注げないじゃない」

 確かにこの村には魔法が使える人がほとんどいないんだよね。

 そりゃ僕やキャリーナ姉ちゃんのほかにも、お爺さん司祭様なら魔力を注げると思うよ。

 でも、お菓子を作るから魔力を頂戴なんて流石に司祭様には言えないから、普通に考えたらやっぱり僕たちがいないと使えないよねってヒルダ姉ちゃんが思っても仕方ないんだ。

 だけど今回作った冷凍調理板の魔道具は、そうじゃないんだよね。

「大丈夫だよ。だって、魔力を注がなくたって、ちょっとの間は使えるもん」

 実はこの冷凍調理板、ものすごく簡単な作り方してるから魔力をほとんど使わないんだよね。

 なにせ、スイッチを入れたら氷の魔石が活性化して薄くて小さい銅の板を冷やしてるだけなんだもん。

 だから一度魔石に注いじゃえば、1週間くらい使ったくらいじゃ魔力は無くなんないんだ。

「へぇ、そうなのね」

「うん。流石に全部の魔力を使いきっちゃうと魔石が砂になって崩れちゃうから気を付けないとダメだけど、ちょとでも光ってたら大丈夫。もういっぺん魔力を注げばまた使えるようになるんだよ」

 使うと魔石そのものの魔力が減ってくから魔石の寿命は魔道リキッドを使ってる魔石に比べたらはるかに短いけど、それは重さを軽くする魔道具とかとおんなじだからそんなに気にする事じゃない。

 それに他の魔道具よりこの冷凍調理板は使う魔力自体が少ないから、魔石の劣化も遅いんだよ。

 そう考えると、同じくらい使ってても、もしかしたらこの冷凍調理板の魔石の方が長持ちしちゃうかもしれないんだよね。

「なるほど。それじゃあ、ルディーンが帰ってくるまでくらいなら、毎日使ってもいいのね?」

「うん。使った氷の魔石はちょっと大きい奴だし、冷蔵庫みたいに一日中冷やしてるわけじゃないんだから全く魔力を注がなくても一月は持つんじゃないかなぁ?」

「そう、それなら安心して使えるわね」

 僕がいなくってもスティナちゃんにお菓子作りをやらせてあげられるって聞いて、ヒルダ姉ちゃんはにこにこ。

 それとね、この魔道具は軽くて持ち運びが簡単だから、僕たちがイーノックカウから帰ってくるまでの間はヒルダ姉ちゃんちに持って帰らせてねってお願いされちゃった。

 だって、そうしたらお父さんにスティナちゃんがシャーベットを作ってあげられるからなんだってさ。


「それじゃあ僕、みんなが待ってるからイーノックカウに行くね」

 それから3人でスティナちゃんが一生懸命作ったシャーベットを食べた後、僕はイーノックカウに戻る事にしたんだ。

 だってロルフさんやバーリマンさんが、お水を持って帰るのを待ってるからね。

「気を付けて行ってくるのよ。後、お母さんたちにもよろしくね」

「ルディーンにいちゃ、ばいばい」

「うん! じゃあ、またね」

 と言ってもお外に出るわけじゃなく、僕はヒルダ姉ちゃんやスティナちゃんの前で魔力を体に循環させてると、

「それじゃあ、行ってくるね。ジャンプ」

 お姉ちゃんたちに行ってきますって手を振りながら、ジャンプの魔法でイーノックカウに飛んだんだ。


 ■


「わぁ、ルディーンにいちゃ、いなくなっちゃった」

「ほんと、魔法ってすごいわね」

 聞いてはいたけど、実際に目の前で消えるところを見ると本当に不思議。

 消えたって事は、本当に一瞬でイーノックカウまで移動したって事なのよね?

「いい、スティナ。さっきも言ったけど、ルディーンが使った魔法の事は秘密よ。お父さんにも言っちゃだめ」

「うん! ルディーンにいちゃが、わるいひとにつれてかれちゃうもんね」

 そしてそれを目にした事で、この魔法がどれだけすごいものかがよく解ったわ。

 これは誰にも知られてはダメ。少なくとも、ルディーンが成人して自分の身を守れるようになるまではね。

 私はルディーンが消えた場所を見つめながら、この秘密だけは守り抜かなければと強く心に思ったの。



 魔道具に使う魔石ですが、使い続けると劣化して魔力が弱くなったり、本編でもルディーン君が言って言る通り最悪崩れて砂になってしまいます。

 まぁだからこそ、魔物から魔石が取れ続けても値崩れしないんですけどね。

 実はこの設定、プロット段階からあったもので、どうやって本編に出そうかずっと考えてたんですよ。

 いやぁ、やっと出せて一安心です。


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